逃亡者

第2話 誘惑

キンブルは夜道でルースという女性の車にはねられて病院に運ばれ、
妻ヘレンが死産したときの夢や裁判の夢を見てうなされた。

「ねぇ どっちが生まれたの?」
「男の子だった。
 医者として云わなければならない。
 子供は産声をあげなかった。もう、子供が産めなくても仕方がないんだ。
 子供は持てる。養子をもらおう。」
「私が産んだわけじゃない。子供が産まれないならいらないわ。
 貴方は子供の方が大事なのね。」
グラスが滑り落ちて割れた。「グラスなんかいくらでもあるのよ。」
キンブルはひとり寂しい思いで家を出、車を走らせた。
池で一人の少年が釣をするのを眺めていた。
戻ってきたとき、家の方から片腕の男が車の前に飛び出した。
キンフ゛ルが部屋に戻ると、妻ヘレンが死んでいた。
死刑の判決が下りた。

護送の途中、列車事故で逃げたキンフ゛ルは、
サイレンに追い立てられ一軒家でヤスリを手にいれ、トラックの荷台にもぐり込み手錠を切り取った。

口論は時には暴力に及ぶことがありましたか?
一度、奥さんの右頬に傷があるのを見ました。
奥さんをどの程度愛していましたか。
愛し続けていました。只、子供の件だけは、、、
少年がキンフ゛ルを見なかったという証言を聞いても、もう一人、被告を見たという。
片腕の男。つまり、家の方から飛び出してきた男。
シ゛ェラート゛警部は証言する。
10日以上に渡って片腕の男に似た83人を検問したが、犯罪場所近くには誰もいなかった。
片腕の男がいなかったということを断定できたのですね。
誘導尋問だと弁護士の声。いまの質問は削除しますと裁判長。


ルースはキンブルを自分の家で静養させた。
ルースと交際していたポールは妻と離婚するからとルースに言い寄って来たが、
シ゛ョーシ゛と名を変えたキンブルはルースをポールの家でのパーティーに連れて行き、
ポールの持つ華やかな世界を見せて彼と別れるように諭した。

賑やかな雰囲気の中、キンブルはルースに話す、「君のために総てを捨てる男と思うか。」
ルースはポールに、
「いいおうちと家庭をお持ちね。私は引越します。貴方の目の届かない所へ。」
ぶち壊されたポールが怒る。
「やってくれたな。何かあったら弁護士を立てて争ってやる。
私がルースの替わりに運転していたら、君をひき殺してやっていたよ。」

「ジョージ、貴方に会えて楽しかったわ。」
「ひかれたお礼をまだ云っていなかったね。」
「次に恋人ができたら、このレストランに来て、僕のことを考え、そして相手の事をよく考えるんだ。」

サンフランシスコから来た遠距離バスの行先は決まっている。
だが、ジョージ・ブラウンの行先は決まっていない。彼に残されたものは、ただひとつ。
希望。
再び、リチャード・キンブルに戻れる日への希望なのだ。

   詳細篇[キンフ゛ル事件]

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